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2007年03月26日

私はシスターサツキ...3

ごきげんよう。聖クランベル学園・理事の岩槻です。

学園の3学期は年明けの入学試験に始まり、
卒業式、謝恩会、新入生の入学準備…と、
怒涛の速さで進んで参ります。

わたくしほどの年寄りにもなりますとね、
去る12月に行われた文化会のクリスマスオペラ発表会すら、
つい昨日の事の様に感じるのですよ。

…昔話ついでに、聞いていただけるかしら?

わたくしが聖クランベル学園の教師として赴任したのは、
もう50年近くも前のことになります。
学園の経営が、仕えた教会の系列だったことが縁でした。

正直申しますとね、始めは学園の教師が嫌で仕方なかったのよ。

だって…聖クランベル学園は伝統のある"男子校"だったのですよ?
その頃のわたくしは若い男性と手も繋いだことがなくて…。
むしろ男性が恐ろしかったくらいです。

…でもね、そんな不安もすぐに消し飛んでしまったのよ。
だって学園の生徒達ときたら、
見た目は立派な男性でも、中身は全く子供なんですもの!

そのうちわたくしには、密かな楽しみができました。

例えば生徒に、とても仲の良い二人組がいるとします。
その子達は何をするにも一緒で、肩を組んだり、本当に仲良しで。
それで考えるんです。どうして仲がいいの?ひょっとして恋?とか。

そういう目で見てみると、生徒達の行動がおかしくおかしくて!

…先日、若い頃のそんな遊びを生徒に話したら、
『シスター…それって"フジョシ"のハシリだぜーッ!!』と言われました。
失礼でしょう?…わたくしは生まれもっての"婦女子"、なのよ?

まぁ…そんな風に構ってくれる、
孫のような生徒達に囲まれて…わたくしは幸せ者です。
それでは、ごきげんよう。

2007年03月25日

私はシスターサツキ...2

ごきげんよう。王立アカデミー助教授のサツキ・ソワールです。

本日、日曜日はクレス王子が定例のお茶会にご参加なさる日。
普段は王子の家庭教師につけたわたくしの修道生が、
付き添いを担当するようになっております。

ですが今朝方になり、
その『彼』の実家でご不幸があったということで、
急遽わたくしが代理を務めることになりました。

…しかし、当の王子は会の最中にうつらうつらと居眠りを始める始末。

一時期の、人見知りの緊張しきりだった頃を考えれば、
こうしてリラックスして会に望めることは良い傾向です。
ですが、各国のお歴々を前に居眠りというのはいただけません。

南の国のプリンスフルからは、
『たるんでいる証拠じゃないのか?』
との厳しいご意見を賜りました。

東の国のプリンスシンには『あはは…さすが大物ですね!』、
北の国のプリンセスルナには『お可愛らしい寝顔だわ…うふふ』
と、お気遣いのご意見を賜りました。

『彼』には、土曜日のレッスンを控えるよう意見しなくては。
教育熱心とはいえ、翌日のお茶会に差し障るほど、
愛情と…ぁっぃぉっゅを注ぎ込むなど…あら、わたくしったら何をッ!?

おほほほほほほほほ!今のは何でもございませんわ。

…それにしても、
その時のクレス王子のお幸せそうな寝顔といったらありませんでした。
大方、お気に入りの『彼』の夢でもご覧になっていたのでしょうね…。

それでは、ごきげんよう。

2007年03月24日

私はシスターサツキ...

ごきげんよう。クランベル修道院のサツキです。

昨晩より、ねさんの飼っていらっしゃるワンちゃんが
体調不良を訴えて鳴いていたそうで…。
本日は動物病院へ診察に行かれたそうです。

犬と言えば、思い出したお話がひとつ。

1年ほど前になるでしょうか…寒い秋の雨の日のことです。
修道院の前に、一匹の子犬が捨てられていたことがありました。
もちろん、わたくしどもは保護しましたわ。

ですが、人間への警戒心からなのか…。
わたくしを含め、その場に居た修道士の誰にも懐かず。
まともにミルクも飲んでくれなくて困り果てておりました。

…そこに、任務を終えたブラザーアリマが帰還したのです。

するとどうでしょう。子犬はブラザーアリマに飛びつくと、
尻尾を激しく振って大喜びなのです。
当のブラザーアリマは服が汚れて仏頂面でしたが…。

特にオーカとキッカは残念がっておりましたわ…。
その後も子犬はブラザーアリマにしか懐かなかったので、
子犬の世話係はブラザーアリマに任せることになりました。

あれこれ文句を言いながらも…餌や粗相の始末など、
ブラザーアリマは細やかに世話をしておりました。
朝晩の散歩も欠かさず、大騒ぎしながらシャンプーをしたりも…。

…その子犬ですか?実はそれから1ヶ月ほどして、
捨てたことを後悔した本当の飼い主が名乗り出て、
再び引き取ることになったのです。

ブラザーアリマは『これで清々したぜ』と申しておりましたが、
次の日の朝…ブラザーアリマのベッドの下に、
涙で滲んだ子犬の写真があったことをわたくしは知っています。

…願わくば二度と、
このように命が粗末に扱われぬよう祈るばかりですね。
それでは、ごきげんよう。